「男性ホルモンは薄毛の原因になる」というとちょっと違います。男性ホルモンが直接の原因になるのではなく、男性ホルモンであるテストステロンがα還元酵素と結びついて変化したDHTが、男性ホルモン受容体と結びつくことで結果脱毛シグナルが発せられる、というのが正解です。ここでは育毛剤が、その脱毛に至るまでの過程のどこに作用し、結果として脱毛を防げるのか？について解説します。
5αリダクターゼ（還元酵素）を抑制させると言われている成分
脱毛を予防し発毛効果を出すためには、5αリダクターゼ（還元酵素）を抑制させる必要があります。
5αリダクターゼは、これは薄毛の原因となる男性ホルモンの一種であるテストステロンが変換されたDHT（ジヒドロテストステロン）と結びつくことで薄毛の大きな要因となる物質です。つまり、この5αリダクターゼを抑制させる成分こそが育毛、脱毛予防の救世主となってくれるわけです。以下がその代表例です。
オウゴンエキス
シソ科のコガネバナと呼ばれる植物の根から抽出した成分であり副作用はほとんどありません。
キャピキシル
近年の研究結果によるとミノキシジルの３倍効果があったなどといわれている新成分です。この中に含まれているアカツメクサ花エキス抽出のビオカニンAという物質が5αリダクターゼを抑制させます。
ヒオウギエキス
アヤメ科のヒオウギという植物から抽出されたエキスで、イソフラボンが主成分です。豆乳などでおなじみの女性ホルモンと似た働きをするものです。
5αリダクターゼ抑制作用の他にも、頭皮の老化原因であるMMP-1という物質の生成を阻害する効果もあります。MMP-1はコラーゲンを分解してしまうため、頭皮の潤いがなくなったり紫外線からの刺激を予防できなくなってしまい、頭皮環境にとって悪影響を及ぼします。
ノコギリヤシ
主に北米南部にあるヤシ科の植物です。ハーブとして使用されているためドラッグストアなどでも頻繁に見かけることが多いですね。もともと北米南部にインディアンが強壮剤として使用しており、その地のインディアンに薄毛の人が少ないことから研究が盛んに進められるようになりました。
冬虫夏草エキス
これは草ではなくて蛾の幼虫に寄生するキノコの一種であり菌類に分類されます。漢方薬としても使われており、疲労回復からアトピー、呼吸器系、精力減退などに効果があるとされています。しかし、チベットや中国などごく一部の高原にだけ生息する貴重なものであるため、1kg数十万から数百万で取引されます。中国では輸出制限がかけられているため、簡単に手にすることは難しいです。摂取する際はエキス配合のサプリメントに頼るのが現実的です。
5αリダクターゼを抑制する成分が入った育毛剤
前述のような成分が入っている商品にはどのようなものがあるのかをピックアップしました。
アランテ 薬用 凌駕
オウゴンエキスが配合されています。その他にニンニクエキスが発毛を促進させる働きをしてくれます。
プログノ 126EX plus
キャピシル配合です。3種類のプロテインも配合されているため、髪の毛や頭皮をしっかりと保湿保護することができ、頭皮環境改善にも気を使っている商品です。
5αリダクターゼを抑制する成分が入ったシャンプー
エルーカ ボリュームアップシャンプー
ヒオウギエキス配合。大豆エキスやローヤルゼリーエキス、アルガンオイル、ブロッコリーシードオイル、ベリー系シードオイルなどが
たっぷり配合されているため、リンスやコンディショナーをしなくとも保湿効果のある便利な１本です。
リバテープ製薬 リマーユ スカルプ シャンプー
冬虫夏草エキスを配合し、アミノ酸系界面活性剤を使用しているため、頭皮に刺激を与えすぎずに汚れをとることができます。納得の原材料を使用しているだけあって、値段は少し高め。
5αリダクターゼ抑制効果が期待できる育毛剤ってどんな人がお薦め？
大前提としてDHT（ジヒドロテストステロン）が5αリダクターゼと結びつくことが原因で脱毛している人、つまりAGAが原因の脱毛でないと効果を期待することは難しいかもしれません。
しかし、育毛剤にはその他の役割の成分も配合されています。それによって頭皮環境の正常化、成長因子の活性化などが期待できます。他にどんな成分が含まれているのか？をチェックし、自分の悩みにあったものを見つけることが大切です。
参考）＞＞育毛剤の選び方 一覧
医薬品ではない育毛剤の可能性
現在、日本において発毛医薬品として認可を受けているものはリアップのみです。その他の育毛剤に含まれる有効成分は医学的根拠がなく発毛に関する効果効能が期待できないと考える医師も多いようです。
また医薬品でないため「効果効能」が謳えないといった広告の制限もあり、発毛剤と比較すると、どうしても抽象的な表現が目立ってしまいます。
しかし科学的に作られた医薬品は、効果が出やすい一方で副作用の可能性も高まってしまいます。そこで比較的安全で副作用も出にくい育毛剤で予防改善していこうと考える人も少なくありません。これは間違った方法ではありませんし、個人差はあれど効果を出すことは可能です。これに似たようなものでサプリメントがあります。病気になってから薬で治療するのではなく、天然成分由来のサプリメントを利用して健康を維持する、予防医学は今では一般的です。
最近は次々に新しい商品が開発され、育毛や脱毛予防に効果があるとされる新成分が配合されたり、細やかな髪質や頭皮に合わせた商品もラインナップされているため、使ってみたくなる商品も増えてきました。
サプリメントや育毛剤に含まれている天然成分に共通して言えることがあります。
- すぐに効果は表れず、緩やかな実感が予想されるため、継続することが必要。
- 人によって成分が体質に合う合わないが顕著に出るため、結果が大きく異なる。
- 良い成分が配合されていたとしても、含有量や作用（浸透）メカニズムが不明な場合がある。
以上の点を踏まえた上で自分の悩み・症状から、試してみたい成分の入った育毛剤を選び、次に一定期間（半年程度）自分自身で使ってみる。自分に合う育毛剤を探すには、これが一番確実です。